これまでの説教

日本基督教団幕張教会 早乙女哲自牧師

2017年5月21日「まだ信じないのか」マルコによる福音書4章35~41節

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 今日から、主イエスの奇跡集です。4章の前回までの箇所が、多少文脈にむりがあってもたとえ集であったように、ここから5章にかけて主イエスの神の子としての不思議な業(主イエスが全知全能の神の子であることを受け入れれば矛盾も不思議もありませんが)が描かれます。
 35・36節。なぜ向こう岸へ?5章によると、向こう岸は異邦人の地ですから、異教の地へ向かおうということです。群衆から離れて休息をとるためとか、異邦人伝道のためとか、諸説ありますが、分かりません。ただ、「ほかの船」は、この物語で何の役割も果たしていないので、マルコがこの出来事を採用した古い物語では役割を果たしていたものがマルコの編集によって意味を失ったのかもしれません。37・38節。弟子たちの主要メンバーには漁師だった者たちがいます。船の素人だから怖いのではなくて、専門的な知識をもつ漁師でも怖くなってしまうような嵐の現実があります。船が水浸しになる、このままでは沈没してしまう。慌てふためく弟子たちと対照的な主イエスの姿があります。眠っておられます(継続的動作を表す時制が使われている)。後で風を静めた主イエスに驚く弟子たちの様子が描かれていますから、「主イエスを起こせば何とかしてくれる」と信じたのではなくて、「できることは何でもしよう」と、主イエスを起したのでしょう。39節。これが奇跡の中心ですが、この物語の中心は、その後の主イエスの言葉であり、弟子たちの反応でしょう。「まだ信じないのか」。これまでたくさんの主イエスの言葉を聞き、また癒しを目の当たりにしてきた弟子たちです。しかしまた、「主イエスがおられるから大丈夫」という主イエスへの信頼がありません。この物語は、私達に(めには見えなくても)共におられる主イエスを信頼することへと励ますと共に、それができなくても見捨てないで助けてくださる主イエスがおられることを示し私達を励ましています。