これまでの説教

日本基督教団幕張教会 早乙女哲自牧師

2017年9月17日「あなたは、キリスト」マルコによる福音書9章27~30節

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 27節前半。このフィリポ・カイサリア地方というのは、新約聖書の世界の中で、最も水が豊かな地方の一つです。他には、ザーカイの出てくる出来事で有名なエリコなどもそうです。あまり水のない荒涼とした地域を旅しますと、私達水の豊かな所に生まれ育った者には、ほっとするような所です。そしてまた、当時のユダヤ世界では、北の外れでもあります。これから(十字架に掛かるために)赴くユダヤよりも、今まで活動の中心であったガリラヤよりも、更に北に位置します。恐らくはヘルモン山から溢れ出る水のせせらぎの音の中で、普段の活動領域から離れたところで、主イエスは弟子たちに尋ねます。最初は答えやすい問いです。27節後半~28節。主イエスが人びとからどのような方として受け止められているかを問います。弟子たちは、自分たちに責任のないことです、口々に答えます。「洗礼者ヨハネ」は、以前にヘロデの話として出てきました。更にエリヤは預言者の中の預言者です。「預言者の一人」というのは、当時既に預言者が現れなくなって久しかったので、特別な意味をもちます。次に主イエスは「ではあなたがたは?」と問います。人の話でなく自分のことですから、無責任ではいられません。弟子たちを代表して(ここが私達プロテスタントがカトリックとは決定的に異なる点の一つ)、ペトロが答えます。29節。「あなたは、キリストです(元のギリシャ語ではメシアでなく、キリスト、以前の口語訳聖書も)。これは油注がれた者という意味で、本来王・祭司・預言者、特別な使命のために選ばれて油を注がれた者です。しかし主イエスの時代には救い主として特別な意味を持つ言葉になっていました。弟子たちは、主イエスがどのようなキリストであられるのか、まだ分かっていません(次回のペトロ参照)。主イエスの十字架と復活によって、はじめて分かります。私達も「あなたは…」と問われています。その中身の理解がまだ曖昧でも、まず「キリスト」として受け入れる。そこから信仰がはじまります。