これまでの説教

日本基督教団幕張教会 早乙女哲自牧師

2017年12月24日「私の心は喜ぶ」(サムエル記上2章1~10節)

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 クリスマスおめでとうございます。今日も前回同様、講解説教をお休みして、クリスマスに比較的よく読まれる聖書箇所です。「ハンナの祈り」という表題がついていますが、これは、ハンナの讃歌であり、ルカによる福音書のマリアの讃歌のもとになった讃歌であると言われます。実際にこの両者はとてもよく似ています(関心のある方は後で比較して下さい)。ハンナと同様に、ヨハネの母エリサベトも赴任の女でしたから、マリアの讃歌は、エリサベトの讃歌が、救い主の母マリアに帰せられたものだという説もある位です。さて、ハンナは、1章を読めば分かりますように、不妊の女であって、もう一人の妻ペニナに対して大変な劣等感をもっていました。そのハンナを主なる神は御心に留めて(1章29節)、男の子を産みました。ハンナは、約束通り、このサムエルを主なる神にささげます。そしてこの讃歌を歌います。1節と10節に「角」があって、全体を枠づけています。このハンナの讃歌は、何よりもまず、不妊であった女が、子を授かった喜びを歌う歌ですが、それだけにとどまりません。不正や悪をそのままにしないで、必ず裁かれる神への信頼が歌われます。1~3節。そして、様々な事柄における逆転が歌われます。4~8節前半。マリアの讃歌と共に「革命歌」と呼ばれるゆえんです。その根拠は、主の力、権限、威光です。8節後半~10節。まだサムエル誕生の時代、イスラエルは王政ではありませんでした。しかし将来のダビデ・ソロモンの繁栄を先取りして、この歌は終わります。勿論、私達にとってこの歌はそれだけのものではありません。主イエス、油注がれた者が私達人間に与えられて、完成は終末を待たなければなりませんが、既に今、悪と不正が裁かれ始め、新しい世界がはじまっています。私達は御子の御降誕を喜び祝う中で、私達の主なる神が、この不正と悪に満ちた世界で「既に新しいこと・全ての逆転をはじめておられる」ことをみるのです。