これまでの説教

日本基督教団幕張教会 早乙女哲自牧師

2022年9月4日「目の中の丸太って何?」(ルカによる福音書6章37~42節・八木かおり)

  本日の物語の語りだしは「人を裁くな」です。しかし、これはわたしたちの現在に、そのままの言葉として一般化していいものではありません。イエスにおいて、それからルカにおいてのそれぞれの状況を捉える必要があります。イエスが「人を裁くな」という時、それは誰に対して言ったのか、どのような状況がそこにあったからなのか。さらに、ルカがそれを言う時はどうなのか。そして、それらを、現代

のわたしたちはどう受けとめて読むのか。「人を裁くな」とイエスが言ったのは、当時のユダヤ教主流派が律法遵守や神殿祭儀優先といった観点から「罪人」を内につくりだし排除するという状況にあったことに向けられていたと考えられます。イエス自身がそう言ったのであれば、それは起きていた事態に真っ向から抵抗する言葉であったでしょう。また、ルカの場合は、彼が知る当時の初期のキリスト教会内およびローマ世界にむけての生き延びるための言葉でもあったでしょう。
 「まず、自分の目から丸太を取り除け」…これは他者を安易に裁き、排除して安穏としていられるようなありようを、自らが「裁く」側に立って平然としていられるようなありようを是としてはならないということだと思います。「裁く」側に立ってしまった者の目の中に丸太がある、それを「取り除け」と言われているのであれば、それは「現実を直視しろ」ということでもあるかと思います。なんてシンプルで、そしてどれだけ重く難しい問いなのだろうと改めて感じつつです。この言葉は、自分を棚に上げることを戒めるものですし、同時に、棚に上げない代わりの「同じ穴の狢」「目くそ鼻くそ」「五十歩百歩」に留まろうとすることも許してくれません。ただ「自らの生の現実を引き受けて生きぬけ」ということなのかなと思います。