これまでの説教

日本基督教団幕張教会 早乙女哲自牧師

2023年2月19日「献呈の言葉」(ルカによる福音書1章1~4節)

 今日からどれだけの月日がかかるか分かりませんが、ルカによる福音書を読み始めました。この福音書を読みはじめてすぐに気が付く特徴は、今日の箇所です。献呈の言葉が(他の福音書とは違って)あります。
 3節です。このテオフィロというのがどんな人物なのか、よく分かりません。様々な推測がされておりますが、分かりません。歴史書などに一切でてきません。ただ、書物を献呈するのですから、身分の高い人物であったのは確かでしょう。そしてこの人物、テオフィロが、既に教会・キリスト教の教えに触れていて、しかも、まだ、信ずるには至っていないことが、4節から分かります。教えが確実なものであることが分かるために必要なことは何か。最近はよく「エビデンス」ということがいわれます。事実、ネット上のデマに踊らされて拡散してしまう人々や、犯罪になってしまうような行動に走る人々も現れていますから、きちんと根拠を確かめることは大切です(ロシアのプロパガンダなどをみれば、「ヒト」が流す情報を鵜呑みにすることがどれだけ危険なことか、よく分かります)。しかしルカは、福音書を書くにあたって、エビデンスを大切にするのではなくて、順序正しく物語を書くことにしました。
 ルカ以前にもそういう努力はありました。1・2節です。多くの人々が手を着けているのに、なぜ恐らくは第一世代ではないルカも物語を書くべきだと思ったのでしょうか。ルカにはルカの信仰があります。そしてそれを自分で物語ることで、テオフィロに信仰・福音の確かさを掴んで欲しいと考えたのでしょう。
 理屈や理論では伝わらない真実があります。物語という仕方でしか伝わらないものがあります。私達もこの福音書を読んでいくことで、この物語を再び紡いでいきましょう。